2010年06月19日

健康に「だけ」は気をつけて!

新解さん(新明解国語辞典)で「だけ」を引くとこう書いてある。

 ①その程度を持って限度とすることを示す。
  「いい--取りなさい・やれる--やろう」

 ②その事柄が許容される限度であることを表す。
  「これ--は確かだ・君に--話す・二人--でやろう」

 ③やった・(思った)事に応じて、その結果が十分なものであることを表す。
  「わざわざ行った--のことはあった・がんばった--あって成績が上がった・
   練習すればする--進歩する」


①②はともに限度を表している。
英語ならonly,just、場合によってはat least,as much asと言ったところか...。

③の使い方は少々変わっている。
英訳する場合も、個々の事例によって様々な表現が必要になるだろう。

言葉の違いに敏感になってもらおうと作った教材がある。
複数の文で、ニュアンスがどう異なるかを書かせるものだ。
簡単な例を挙げよう。

 1.歩いて10分かかる。
 2.歩いて10分もかかる。
 3.歩いて10分しかかからない。


客観的な事実を述べているだけの1と比べて、2や3には話者の主観が入っている。
それを説明させようというわけだ。

その中にこんな問題を入れた。

 1.健康には気をつけてね。
 2.健康にだけは気をつけてね。


「2は、他のことは気をつけなくていいと言っている」と書いてくる生徒がいる。
そうだろうか...。

新解さんの用例にある「これだけは確かだ」なら、他のことは確かでないという意味が含まれよう。
しかし、2の「だけ」にonlyやjustのニュアンスは感じられない。

私には、1と比べて2の方が、相手への思いやりが強いように取れるのだ。
他のことに気をつけるのはもちろんだが、
中でも健康に最大限の注意を払ってほしいというメッセージが感じられないだろうか。

英語にするならespeciallyだ。
あるいは最上級を使うか...。


こんな「だけ」の使い方、他にあるだろうか?
辞書にもぜひ言及してほしい言い方なのだが...。




健康に「だけ」は気をつけて!





 





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Posted by どーもオリゴ糖 at 12:02│Comments(0)ことば
 
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