2010年07月20日

「消毒」ということば

前にも書いたように、ただでさえ過度な清潔志向が蔓延しているところに、
鳥インフルエンザだ、口蹄疫だと拍車がかかり、
今や日本列島は消毒漬けである。

日常生活から農業、商業、医療・福祉まで、
一日に行われる消毒の量はどれくらいになるのだろう...。

そんなことを考えていたら、この「消毒」という言葉が気になった。
似たような言葉に「殺菌」「滅菌」、最近よく聞く「除菌」「抗菌」などがある。
いったいどこがどう違うのか...。

いろいろ調べてみたら、どうもこんなことらしい。
「殺菌」や「滅菌」は、すべての菌を死滅させること。
菌が病原性のものか否かに関わらずである。

それに対して「消毒」は、病原菌を死滅または除去することで、
非病原菌の残存は許されるという定義になっている。

 因みに「除菌」は、濾過や洗浄によって菌を除去すること。死滅させるわけではない。
 「抗菌」は最近使われ出した用語で、まだ明確な定義は確立していないという。
 今のところ、「除菌」よりも緩やかなレベルと解釈されているようだ。

となると、やはりあまり神経質に殺菌だ、滅菌だというのは避けた方がいいだろう。
人体に有用な常在菌まで死滅させることになる。
医療現場などではともかく、日常生活ではせいぜい「消毒」に留めるべきだ。

...と、ここでまた考えた。
農業には付きものの「消毒」、あれは本当に「消毒」なのか...。

妻が管理している家庭菜園では、消毒など一切しないのでテントウムシが異常に多いようだ。
見ばえにこだわる消費者が多数である以上、
出荷する作物には消毒が欠かせないのも理解できる。
見ばえ以前に、消毒しなければろくに実がならないものもあるだろう。
以前、一時期だけ小梅の畑を借りたことがあるが、
まったく消毒しなかったので惨めな収穫に終わった...。

だから、農家の方を非難するつもりは全くない。
その点をご了解いただいた上で言わせてもらうが、あれは「消毒」ではないのではないか?
むしろ、そのために使用する農薬の方が「毒」であろう。
残留農薬を気にする消費者も少なくない...。

劇薬レベルの薬を散布しているのだから、あれではすべての菌を死滅させているように思われる。
ならば「殺菌」「滅菌」と呼ぶべきではないか。

実は作物にとって有用な菌まで殺している、ということもあるのではないか。
「虫が来ない」のは「虫も来ない」ということでもある...。






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Posted by どーもオリゴ糖 at 12:54│Comments(0)ことば
 
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