2010年09月12日
酒の味を「覚える」
言語力を育てる教材を製作中である。
まずは中学生向けのものから...。
著作権に抵触しないよう、「青空文庫」に収録されているものを題材にする。
第一弾は新美南吉作「おじいさんのランプ」である。
この話、おぼろげな記憶はあったのだが、
今回改めて読んでみて、素晴らしい作品であることを再認識した。
ぜひ皆さんにご一読いただきたい。
さて、これを元に様々な問題を作っているのだが、
市販の国語問題集とは一線も二線も画するものをということで、とても時間がかかる。
なんとか早めに仕上げたいのだが、遅々として進まない...。
物語の中盤、孤児だった主人公の「巳之助」はランプ屋で成功し、
立派に一家を支えるまでになった。
一部を抜粋する。
巳之助はもう、男ざかりの大人であった。家には子供が二人あった。「自分もこれで
どうやらひとり立ちができたわけだ。まだ身を立てるというところまではいっていない
けれども」と、ときどき思って見て、そのつど心に満足を覚えるのであった。
ここの「満足を覚える」という表現を題材にしようと考えた。
「覚える」を他の言葉に言い換えるとどうなるかを考えさせるのだ。
...ここではもちろん「感じる」、あるいは「思う」が正解となろう。
「違和感を覚える」「痛みを覚える」などと同じだ、
改めて読み返すと、今の部分のすぐ前にも「おぼえる」があった。
こちらは平仮名だ。
字が読めなかった巳之助は、区長に字を教わる。
熱心だったので一年もすると、巳之助は尋常科を卒業した村人の誰にも負けないくらい
読めるようになった。
そして巳之助は書物を読むことをおぼえた。
この「おぼえる」はどうだろう?
先ほどの「覚える」とは明らかに意味が違う。
だからこそ、作者もあえて平仮名にしたのかも知れない。
言い換えればどうなるか...。
いっそのこと、いろいろな「覚える」を登場させて、
その使い分けを意識させる問題にしようかと考えた。
まずは辞書を引いてみる。
「広辞苑」は古語辞典の役割も兼ね備えているので、
「覚える」で引くと「覚ゆ」を見ろとあった。
古語としての意味は省いて紹介する。
①自ずとそう思われる。感じる。
②記憶する
③学んで知る。教えられて習得する。
続いて「旺文社国語辞典」。
①記憶する。忘れずに心にとどめる。暗記する。
②学ぶ。会得する。
③感じる。
さて、「書物を読むことをおぼえる」はどれにあたるだろう...。
近いのは「学んで知る。教えられて習得する。」と「学ぶ。会得する。」だが、
なにか違う気もする。
「仕事を覚える」や「料理を覚える」なら
「学んで」「習得する」というイメージでピッタリなのだが...。
この場合、読めなかった字を熱心に学び、ついに読めるようになった。
字を読むことを習得した、つまり「字を覚えた」のだ。
その結果として「書物を読むこと」が可能になっただけだ。
書物の読み方を学んだわけではない...。
困ったときは「新解さん(新明解国語辞典)」だ。
①心やからだで、そう感じる。
②(経験した事や習得した事を)忘れられないものとして心にとどめる。記憶する。
③(習得した事を)身につける。体得する。
④「思われる」意の老人語。
特筆すべきは②だ。
単に暗記する、記憶するではなく、しっかりと心に刻み込むというニュアンスが感じられる。
ただ、ここに挙げられている文例がピンとこない。
「酒の味を覚える」
これは記憶するわけでも、心にとどめるわけでもない。
「知る」「知り始める」くらいの意味ではないだろうか...。
先に挙げた「書物を読むことをおぼえた」も、私はこれと同じだ解釈している。
字を読むことを習得して、本を読むことを知ったのだ。
辞書に「覚える」の意味を追加してほしいところだ。
皆さん、どう思われますか?
「酒の味を覚える」を「習得する」や「記憶する」で説明されて腑に落ちますか?ぜひご意見をお聞かせください。

まずは中学生向けのものから...。
著作権に抵触しないよう、「青空文庫」に収録されているものを題材にする。
第一弾は新美南吉作「おじいさんのランプ」である。
この話、おぼろげな記憶はあったのだが、
今回改めて読んでみて、素晴らしい作品であることを再認識した。
ぜひ皆さんにご一読いただきたい。
さて、これを元に様々な問題を作っているのだが、
市販の国語問題集とは一線も二線も画するものをということで、とても時間がかかる。
なんとか早めに仕上げたいのだが、遅々として進まない...。
物語の中盤、孤児だった主人公の「巳之助」はランプ屋で成功し、
立派に一家を支えるまでになった。
一部を抜粋する。
巳之助はもう、男ざかりの大人であった。家には子供が二人あった。「自分もこれで
どうやらひとり立ちができたわけだ。まだ身を立てるというところまではいっていない
けれども」と、ときどき思って見て、そのつど心に満足を覚えるのであった。
ここの「満足を覚える」という表現を題材にしようと考えた。
「覚える」を他の言葉に言い換えるとどうなるかを考えさせるのだ。
...ここではもちろん「感じる」、あるいは「思う」が正解となろう。
「違和感を覚える」「痛みを覚える」などと同じだ、
改めて読み返すと、今の部分のすぐ前にも「おぼえる」があった。
こちらは平仮名だ。
字が読めなかった巳之助は、区長に字を教わる。
熱心だったので一年もすると、巳之助は尋常科を卒業した村人の誰にも負けないくらい
読めるようになった。
そして巳之助は書物を読むことをおぼえた。
この「おぼえる」はどうだろう?
先ほどの「覚える」とは明らかに意味が違う。
だからこそ、作者もあえて平仮名にしたのかも知れない。
言い換えればどうなるか...。
いっそのこと、いろいろな「覚える」を登場させて、
その使い分けを意識させる問題にしようかと考えた。
まずは辞書を引いてみる。
「広辞苑」は古語辞典の役割も兼ね備えているので、
「覚える」で引くと「覚ゆ」を見ろとあった。
古語としての意味は省いて紹介する。
①自ずとそう思われる。感じる。
②記憶する
③学んで知る。教えられて習得する。
続いて「旺文社国語辞典」。
①記憶する。忘れずに心にとどめる。暗記する。
②学ぶ。会得する。
③感じる。
さて、「書物を読むことをおぼえる」はどれにあたるだろう...。
近いのは「学んで知る。教えられて習得する。」と「学ぶ。会得する。」だが、
なにか違う気もする。
「仕事を覚える」や「料理を覚える」なら
「学んで」「習得する」というイメージでピッタリなのだが...。
この場合、読めなかった字を熱心に学び、ついに読めるようになった。
字を読むことを習得した、つまり「字を覚えた」のだ。
その結果として「書物を読むこと」が可能になっただけだ。
書物の読み方を学んだわけではない...。
困ったときは「新解さん(新明解国語辞典)」だ。
①心やからだで、そう感じる。
②(経験した事や習得した事を)忘れられないものとして心にとどめる。記憶する。
③(習得した事を)身につける。体得する。
④「思われる」意の老人語。
特筆すべきは②だ。
単に暗記する、記憶するではなく、しっかりと心に刻み込むというニュアンスが感じられる。
ただ、ここに挙げられている文例がピンとこない。
「酒の味を覚える」
これは記憶するわけでも、心にとどめるわけでもない。
「知る」「知り始める」くらいの意味ではないだろうか...。
先に挙げた「書物を読むことをおぼえた」も、私はこれと同じだ解釈している。
字を読むことを習得して、本を読むことを知ったのだ。
辞書に「覚える」の意味を追加してほしいところだ。
皆さん、どう思われますか?
「酒の味を覚える」を「習得する」や「記憶する」で説明されて腑に落ちますか?ぜひご意見をお聞かせください。

Posted by どーもオリゴ糖 at 13:22│Comments(0)
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