2010年10月22日

道案内の力

言語表現力の中で、まず鍛えたいのが説明力である。
それを測るのに最適な素材の一つが、地図を見ての道案内だ。
ここのところ、甚だ要領の悪い説明を連続して目にして、その感を強くした。

塾には、図形や漢字、間取りや家系図、算数の考え方など、
様々なものを説明させるオリジナル教材があるが、
今回のは塾用の国語教材(小学生レベル)の一部である。
答えたのは中2の男女1名ずつ。

ごく簡単な道案内だ。
下図の●の位置から図書館までの道を教えればよい。
今手元に教材がないのでうろ覚えだが、50~60字の字数制限がある。

普通に考えれば、こんな説明になろうか。

 「この道を行って二つ目の角を右に曲がります。橋を渡って次の角を左に曲がると、
  右手に図書館があります。」


これくらい楽勝だろうと思っていたが、ずいぶんと時間がかかる。
どう表現していいか迷っているらしい。
やっと書き始めたと思ったら、今度は指定された字数内に収まらない...。









道案内が下手な子は、二つの面で「相手の立場に立つ」ことができていない。
一つは、相手にとって何が重要な情報なのかを考慮していないということ。
たとえばこんな説明を書いてくる。

 「一つ目の十字路を通り過ぎて、二つ目の十字路を曲がり...」

どこでどちらに曲がるかが重要なのである。
一つ目の十字路のことなど触れる必要はない。
いや、触れるべきではないのだ。
親切のつもりで詳しく述べているのだろうが、余計な情報を増やすとかえってわかりにくくなる。
おまけに、肝心な二つ目の角をどちらに曲がるかが書かれていないのでは不親切この上ない。

橋を渡って十字路を左折するところまでで説明を終えているケースも多い。
これでは、曲がってからキョロキョロしなければならない。
どちら側に図書館があるのかまで教えてあげるのが、親切な道案内というものであろう。

相手の立場に立っていないもう一面の例。
自分の視点からだけで説明している。

 「二つ目の角を橋がある方に曲がって...」

自分は地図を見ているから、橋があるとわかるのだ。
実際にその場で、角から橋が見えるとは限らないではないか...。

橋を渡った後左折してからの説明。

 「すると上に図書館があります」

これも、地図を見ているからこそ出てきた表現であり、
現場を歩いている者には全く意味のない説明である。
左折した先が坂道になっていて、坂の上に図書館があるのかと思ってしまう。

   ※  ※  ※

企業が新入社員に求める力のトップはコミュニケーション力だ。
その根本を成すものの一つが、相手にわかりやすく説明できる力だと言えるだろう。
小中学生のうちから、少しでもその力を培ってやりたいと思っている。


  


Posted by どーもオリゴ糖 at 13:27Comments(0)よしなしごと