2010年10月14日

「万引き」を定義せよ

心酔してやまない「新解さん」(新明解国語辞典)の魅力を生徒にも紹介した。
(以前に紹介した新解さんはこちらやこちら。)

さすがに中学生に「合体」とか「性交」の解釈を披露するわけにはいかないので、
「動物園」「憎い」で、他の辞書ではあり得ない定義を体感してもらう。

他にも面白いのがあったはずだと前に書き留めたメモを探し出し、
次は「万引き」「主婦」を味わってもらおうと決めた。

当日になって思い立った。
いきなり新解さんの解釈を見せる前に、まず彼らに自分なりの定義を書いてもらおう。
その後、一般的な辞書の解釈と新解さんのそれを紹介すれば、
新解さんのユニークさがいっそう際だつだろうと考えたのだ。

その場にいた中3生6名(全員男子)に書いてもらう。
制限時間は5分。
自分が辞書の編集者になったつもりで説明しろと指示した。

ウチの塾は普段からよく辞書を引かせているし、
オリジナル教材にも言葉の定義を書かせる問題があるので、
結構それっぽい答が集まった。

当たり障りのないいかにも辞書的なもの、
自分の経験を元にした新解さん顔負けのユニークなもの...。
生徒それぞれの性格や家庭環境まで垣間見えて面白い。
それぞれに過不足はあるが、どれもなかなかの作品だった。

まずは「万引き」の定義。

 「店で売っている品物を、無断で持ち出そうとする行為。」
 「店で商品を、お金を払わずに勝手に持ち出すこと。」


この辺りはおとなしい。

 「身近にあるコンビニやスーパーから、金ではなく売り物を盗って
いく人。犯罪者。
  ときには何十人の連合を組んで物を盗りに来る。」


「コンビニやスーパー」に限定しているところは問題だが、
「ときには」以降がユニークだ。

 「店にある商品を許可なく持ち去り、店に損害を与える犯罪。」

「店に損害を与える」という定義を入れたはこの子だけだった。

私が一番気に入ったのがこれ。

 物をこわさず、人に恐怖を与えることなく品物を盗むこと。」

なるほど!

...泥棒や強盗との違いを明確にしたかったようだ。


因みに実際の辞書ではこうなっている。

 「物を買うふりをしてそっとぬすむこと、また、その人。」(小学館・新選国語辞典)

 「買い物をするふりをして、店頭の商品をかすめとること。また、その人。」(広辞苑)


そして新解さんは...

 「店員の見ていない隙に売り場の商品を手に取り、
  自分の持ち物(買った物)であるかのように見せかけて店外に持ち出す・こと(人)。」


さすがにリアルだ!
HOW TO 万引きの指南書みたい...。

さらに面白かった「主婦」については、また次回に...。












     


Posted by どーもオリゴ糖 at 11:55Comments(0)ことば