2010年06月18日

宴もたけなわ

「宴もたけなわではございますが...」

幹事からこの言葉が発せられたら、そろそろお開きにしたいのだと推測できる。
盛り上がっているときに水を差すようなことを言うのは無粋だという声も出そうだが、
実際には皆そろそろ潮時と思っている頃合いのことが多い。
「宴もたけなわ」はお決まりの、美辞麗句的なものだと思って来た。

ところが、そうでもないようなのである。

「たけなわ」は漢字では「酣」もしくは「闌」と書く。
語源は「宴(うたげ)なかば」あるいは「長(た)ける+成る」であるという。

辞書を引いてみると、
「物事の最も盛んな時」「行事・季節などが最も盛んになった時」といった説明が第一義である。
これしか載っていない辞書もある。
私が持っているイメージも同じであった。

だが、二つ目として、微妙にニュアンスの異なるこんな定義も載せているものが多い。

 「さかりを少し過ぎておとろえかけた時」
 「盛りが極まって、それ以後は衰えに向かう時」


直感としては、こちらの方が元々の意味だったのではないかと思う。
「旺文社国語辞典」では「酣」は「酒宴の最中」、
「闌」は「酒宴や物事の半分を過ぎたこと」と区別している。

上りつめればあとは落ちていくだけだ。
満開を過ぎれば、あっという間に花は散る。
絶好調の後には不調の時期が来る。
人生楽ありゃ苦もあるさ...ちょっと違うか...。

諸行無常、盛者必衰の理を知り尽くした上で、
だからこそ盛りを少し過ぎたところに美しさや趣、「もののあはれ」を感じる...。

そんなニュアンスのこもった素敵な言葉だと思う。
「花の色はうつりにけりな...」の歌も彷彿とさせるような...。

「新解さん」(新明解国語辞典)による「たけなわ」の説明には、その無常観が最も現れている。
括弧の中に注目。

 「(比較的短い期間しか続かない状態について)ピーク時の称」

楽しい時間はそう長くは続かないことを、みんなわかっているのだ。
祭が終われば、また厳しい現実が待っている。
楽しくも切ないひとときが「たけなわ」なのである。

してみると、冒頭の「宴もたけなわ」も少し捉え方が違ってくる。
ピークをやや過ぎたことを的確に判断した、機微をわかった発言ということになる。
ただ、それなら、「宴もたけなわでございますので...」とするべきだろう。
今度使ってみようか...。




































  


Posted by どーもオリゴ糖 at 13:02Comments(2)ことば