2010年08月05日

西瓜の詩

山村暮鳥という詩人がいる。
明治から大正期に活躍した人で、「雲」と題する一編は有名だ。


   おうい雲よ
  いういうと
  馬鹿にのんきさうぢやないか
  どこまでゆくんだ
  ずつと磐城平(いはきたひら)の方までゆくんか



以前公文の本部に勤めていたことがある。
ちょうど3人の子どもが生まれた時期だ。

もちろん公文式の幼児教材はやらせたし、
「漢字カード」「俳句カード」「詩のカード」も至る所に貼っていた。
俳句や詩のカードは大人も一緒に楽しめて楽しかった。

子どもが大きくなるにつれ、その間に引越を何度も繰り返したこともあり、
いつしかカード類はダンボール箱の底に埋もれていた。

昨年から塾で、「今月の俳句・短歌」を覚えさせるようになった。
「俳句カード」で印象に残っていた句も多数利用させてもらっている。

最近になって妻が、「詩のカード」を引っ張り出し、
トイレに3編ずつ掲示するようになった。
更新は妻の気分次第なので、極めて不定期であるが、
落ち着いた環境で否応なく目に入るので、すぐに覚えてしまう。
「ああ、こんなのもあったな...」と懐かしくなる。

先月だったか、「西瓜の詩」があった。

この短い詩は強烈に記憶に残っている。
ほのぼのとしたユーモアがあって、子どもたちもすぐに覚えてしまった。
あれから十数年経つが、今でも西瓜を見るたびに口ずさんでいる。


   どうも不思議で
  たまらない
  叩かれると
  西瓜め
  ぽこぽこといふ



これが山村暮鳥の作であったことは今回初めて知った。
昨年からずっと注目している詩人だ。
塾に掲示する俳句や詩を集めているときに、
「風景」という題の鮮烈な詩に出会ったのだ。
(これはまた、その季節(春)になったらご紹介する...。)
なるほど、彼の詩だったのか。
さすがだ...。

青空文庫から、「西瓜の詩」が含まれている詩集をダウンロードしてみる。
読んでいくと、「おお、これもそうか...。」と嬉しくなった。

これも「俳句カード」で覚えた詩だ。


   林檎をしみじみみてゐると
  だんだん自分も林檎になる



難しい言葉を散りばめたような理屈っぽい詩より、
私はこういう素朴な味わいの詩が好きである。








  


Posted by どーもオリゴ糖 at 11:50Comments(0)ことば